変化する磁場から電場が生じるという電磁誘導の現象が発見されたあとに、
変化する電場から磁場が生じるという現象も存在するのではないかと考えられていました。
これに答えを出したのがスコットランドの物理学者、マクスウェルでした。マクスウェルは、コンデンサの電極間に流れる変位電流の現象に基づいて、変化する電場から磁場が生じる現象を方程式にしました。この方程式は電磁波の存在を示唆し、電磁気学の発展につながりました。
しかし、変位電流という名称に象徴されるように、変位電流はあくまでも特殊な電流にすぎなかった可能性が高いのです。なぜなら、変位電流から生じる磁場の向きは、電流から生じる磁場の向きと同じだったからです。
電磁誘導という現象は、変化するものに対して変化を妨害する方向に働きかけるものです。しかし、変位電流から生じる磁場は、変化を助長する方向になってしまっています。
これは、変化する電場から磁場が生じる現象として、変位電流の例を持ってきたのがよくなかったのではないでしょうか。変位電流が落とし穴だったのです。単に、静電気の電場を磁石に近づけたり、磁石から遠ざけたりする実験を行えば、変化する電場から磁場が生じる現象を正しく認識することができたでしょう。