なぜ今まで「L=T-V」でよかったのか

実は、プラスとマイナスでは大きな違いがあるように思えるかもしれませんが、そうとも限らないのです。

物理学では、座標軸の向きによって、プラスとマイナスは簡単に入れ替わります。例えば、地表面上で座標軸を「上」の方向にとれば、位置エネルギーは上に行くほど、つまり座標軸のプラス方向に行くほど増加します。しかし、座標軸を「下」の方向にとれば、位置エネルギーは下に行くほど、つまり座標軸のプラス方向に行くほど減少します。

結局、座標軸の向きを反転させれば、位置エネルギの正負も反転するのです。

今まで、ラグランジアンが従来の定義の「$L=T-V$」でも問題が生じなかったのは、座標軸の向きを物理的に問題ないように正しくとっていたからだと思われます。
したがって、ラグランジアンを新たな定義の「$L=T+V$」にしたとしても、座標軸の向きを正しくとれば、従来と同じ運動方程式を導くことができ、何の問題も生じないことになります。

ラグランジアン($L$)が従来の定義のように「$L=T-V$」だったとする。座標軸を反転すれば位置エネルギーも反転するので「新たな$T=-T$」となります。ラグランジアンは変化しないことが重要なので、ラグランジアンを反転しても構わないので「新たな$L=-L$」としてもよいでしょう。
すると、従来の定義の「$L=T-V$」は「$(-L)=(-T)-V$」となります。ここで、全体を反転すれば新たな定義の「$L=T+V$」になるのです。