慣性力の原因も時空のゆがみ

次に、慣性力の原因について考えてみます。

慣性力は、物体が加速しているとき、その加速に抵抗する力です。あるいは、その反対に、物体が減速しているときに、その減速に抵抗する力です。

相対性理論によれば、外力を受けずに静止している物体や、等速度で運動している物体からは、時空が平坦に見えています。しかし、加速中の物体や、減速中の物体からは、物体の座標系がゆがんでしまうので、時空がゆがんだように見えています。

ゆがんだように見えているだけで本当はゆがんでいないのですが、あくまでも加速中の物体や減速中の物体の立場からすれば時空がゆがんでいるので、重力と同様にゆがんだ時空から力を受けます。これが慣性力です。ですから、慣性力の原因も時空のゆがみということになります。

時空のゆがみによって慣性力が生じる様子

屋根から落ちる人は、落下中に重力を感じません。このように、自由落下している物体は重力を感じず、無重力状態になります。これは、重力による時空のゆがみと、慣性力による時空のゆがみが、ちょうど打ち消し合って、時空が平坦になるからです。

もし、重力のほうが強ければ、加速が残るので慣性力が増加し、結局、重力と慣性力は釣り合います。反対に重力が弱ければ、加速が減るので慣性力が減少し、やはり重力と慣性力は釣り合います。ですから、重力と慣性力は完全に打ち消し合って、無重力状態になるのです。